おばちゃん、お母さんになる。3

NSTから聞こえる鼓動に、やっとぼんやりと

何が起こっているのかわかり始めました。

(今から、赤ちゃんを、産む)

 

34週なのに?

この病院はクリニックで、NICUがありません。

母親学級で、「36週未満で産気づいた場合は、

ここでは受け入れができません。

別の場所へ紹介します」

と言われていたことを思い出しました。

その時は、ものすごく他人事でした。

 

そもそも、私には早産の兆候がないばかりか、

むしろ先生からは「お産が遅くなりそうだ」と

いわれるくらいだったのです。

そして、年齢や不妊治療のことを踏まえ、

帝王切開で産むことが最初から決まっていました。

そう、そのために次の週から自己血輸血のために

採血をする予定だった、このベッドで……。

そう思いながら、ベッドに横たわっているうちに、

ぼろぼろと涙が溢れました。

(34週で生まれるなんて。どうしよう、私のせいで。

私のせいで、私のせいで、赤ちゃんが、

何か問題が起こるかもしれない。

もっともっともっと節制すべきだった。

糖尿だけじゃなくて、血圧だって、

異常がなかったとしても、もっと節制すればよかった)

 

「大丈夫ですよ、今ね、先生が受け入れ先を探してくれて

ますからね。決まったら、すぐに行きましょうね」

「はい……」

「せっかくきれいなピンク色なのに、ごめんなさいね。

落としますね」

看護師さんが言いながら、優しくマニキュアを落としてくれました。

でも、この状態の私には、マニキュアすらも自分を責めて

いるかのようでした。

(こんなものを塗って、へらへらしてるから、こんなことに

なったのかな。まだ小さいのに。2200グラムしかないのに。

私のせいで……)

「点滴を入れますね」

両腕に点滴を入れられました。

点滴を入れられたのは、流産の手術の時以来でした。

腕が動かせなくなった私の涙を、看護師さんが拭ってくれました。